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脊椎動物遺体

ドキュメント内 浦添市文化財調査報告書 | 浦添市 (ページ 122-127)

 前田西前田原 B 丘陵の調査区で検出された墓遺構の内、7基から脊椎動物遺体が出土した。本章で はこれらの資料についての分析結果について示すとともに、特に着目すべき出土状況が窺われた 16 号墓および 56 号墓の様相について記載する。

第1節 資料について

(1)出土および取り上げ状況

 脊椎動物遺体は、前田西前田原 B 丘陵で検出された墓遺構の内、6・12・16・19・37・40・56 号墓から出土しており、墓室あるいは墓庭において覆土ないし床面を精査中に目視で出土を確認し、

手で取り上げられた資料である。56 号墓以外の遺構については、出土地点・層序を記載の上一括し て取り上げている。一方、56 号墓出土資料の一部は出土状況を作図の上、取り上げ№を付して取り 上げたものと、一括で取り上げたものとに区分される。

(2)分析方法

 上記資料について、現生標本との形態比較による種同定分析を行った。同定の対象としたものは部 位同定が可能なものを基本とし、四肢骨骨幹破片や椎骨の椎体関節面が未癒合で脱落しているものな どについては対象外とした。なお、比較に用いた現生標本は筆者が所蔵する資料を用いた。

(3)分析結果

 分析の結果、鳥類および哺乳類 4 群が同定され、分類群・部位・残存状態・観察所見などについて 一覧化した(第 32・33 表)。

 鳥類は上腕骨及び橈骨が 16 号墓から各 1 点ずつ出土しているが、詳細な分類群は不明である。

 哺乳理はネズミ科、ネコ、ブタ(もしくはイノシシ)、ヤギの 4 群を同定したほか、欠損・未癒合 による脱落した端部で形態が不明瞭なものについては「哺乳類」として判断は保留した。

 ネズミ科は下顎骨・寛骨・大腿骨が検出され、6・40 号墓から各最小個体数1が算定される。

 ネコは四肢骨を中心に同定されており、12・40 号墓からそれぞれ個体数1ずつが数えられる。両 遺構共に覆土中から出土していることから、墓遺構の使用段階との関係性は不明である。

 イノシシ / ブタは、同定資料数のうち、最多を数える分類群である。16・19・56 号墓から出土し ており、四肢骨を中心とするが、16 号墓からは上下の顎骨も出土している。当該資料は M₃ が未萌出 であり、その他の四肢骨などについても大半の資料で骨端などが未癒合の個体である様子が窺える。

形態的に明瞭なブタと判断できる資料はないものの、いずれも若齢の個体である点から、これらの個 体が家畜であったものと推測される。

 ヤギは四肢骨を中心に最小個体数2を数える。

第2節 前田西前田原B丘陵 56 号墓から出土した脊椎動物遺体

 56 号墓は棚を持たず比較的小規模な構造を有する掘込墓であるが、墓室内部からは原位置を保つ 蔵骨器3基と一次葬人骨および副葬品が出土しており、前田西前田原 B 丘陵の調査区の中でも豊富な 情報量を有する墓遺構である。蔵骨器が左右の壁面際に置かれ、中央に頭位を奥壁に、足を入口に置 いた状態で一次葬人骨が検出され、一次葬人骨の頭蓋と奥壁の間に動物骨が床面直上から密集して検 出された。前述の同定結果によりこれらは、イノシシ / ブタおよびヤギが混在して含まれることが分 かる。出土状況を見ると、関節の交連状態は認められなかったため、個別の部位に分離した状態でま とめられ、置かれたものと考えられる。骨の一部にはカットマークや切断痕も観察されたため、いわ ゆる「食糧残滓」としての位置づけられる資料であると思われる。

 前田・経塚近世墓群では、同様に墓室内から動物骨がまとまって出土した事例はこれまで確認され ていない。そのため、これらが食糧残滓の単なる廃棄であるのか、あるいはそれ以外の何らかの意味 を有するのかは検討が必要な事項と言えよう。

 

第3節 まとめ

 前田・経塚近世墓群の調査では、しばしば墓室内や墓庭に構築されたピット内から動物の頭蓋骨が 出土する事例が知られるが、四肢骨などの部位がまとめられて墓室内に置かれた 56 号墓の事例は、

これらとは異なる意義を有するとみるべきであろう。同様の事例が存在するかどうか、あるいは今後 の事例の追加に期待しつつ、考察すべき課題である。

p:近位端 ps:近位側骨幹 s:骨幹 sd:遠位側骨幹 d:遠位端 ( ):端部未癒合脱落 < >:端部未癒合残存 〔 〕:未癒合で脱落した端部 [歯種記号]:下線部→残存歯、記号のみ→脱落歯、×→歯槽閉鎖 遺構

地点

取上

分類群 部位 左右 残存状態 所見

6 シルヒラシ直上 一括 ネズミ科 下顎骨 L 完存

6 シルヒラシ直上 一括 ネズミ科 寛骨 L 恥骨欠損

6 シルヒラシ直上 一括 ネズミ科 大腿骨 L p~s

6 シルヒラシ直上 一括 鳥類 上腕骨 R 完存

6 シルヒラシ直上 一括 鳥類 橈骨 不明 完存

12 墓室埋土 ネコ 上腕骨 R (p)~d 近位端未癒合脱落

12 墓室埋土 ネコ 大腿骨 L (p)(d) 両端未癒合脱落

12 墓室埋土 ネコ 大腿骨 R (p)(d) 両端未癒合脱落

12 墓室埋土 哺乳類 尾椎 完存 ネコ?

16 墓庭埋土左袖角 ブタ 上顎骨 L [CP¹m¹m²m³M¹M²] C萌出中、オス

16 墓庭埋土左袖角 ブタ 上顎骨 R [P¹m¹m²m³M¹M²] M²萌出中

16 墓庭埋土左袖角 ブタ 下顎骨 LR L[I₁I₂I₃Cm₁m₂m₃M₁M₂(M₃)]

R[I₁I₂I₃Cm₁m₂m₃M₁M₂(M₃)]

M₃未萌出、オス

19 墓室埋土 ブタ 肩甲骨 L 関節窩~くびれ部

19 墓室埋土 ブタ 肩甲骨 R 関節窩~くびれ部

19 墓室埋土 ブタ 上腕骨 R

19 墓室埋土 ブタ 寛骨 L 坐骨 腸骨との関節面未癒合

19 墓室埋土 ブタ 寛骨 R 坐骨

19 墓室埋土 ブタ 寛骨 R 腸骨

19 墓室埋土 ブタ 大腿骨 R (p)~s

19 墓室埋土 ブタ 脛骨 R

19 墓室埋土 ブタ 椎骨 椎体14 椎体後関節面未癒合脱落

19 墓室埋土 ブタ 椎骨 棘突起及び関節突起、多数 集計対象外

19 墓室埋土 ブタ 肋骨 不明 破片多数 集計対象外

37 墓室奥棚直上 2 哺乳類 椎骨 棘突起

40 墓室埋土 ネコ 前頭骨 L 眼窩周辺

40 墓室埋土 ネコ 前頭骨 R 眼窩周辺

40 墓室埋土 ネコ 下顎骨 L [I₁I₂I₃CP₁P₂M₁]

40 墓室埋土 ネコ 上腕骨 L <p>~s 近位端未癒合残存

40 墓室埋土 ネコ 上腕骨 R (p)~d 近位端未癒合脱落

40 墓室埋土 ネコ 橈骨 R p~(d) 遠位端未癒合脱落

40 墓室埋土 ネコ 尺骨 R 完存

40 墓室埋土 ネコ 寛骨 L 完存

40 墓室埋土 ネコ 寛骨 R 腸骨欠損

40 墓室埋土 ネコ 大腿骨 L (p)~s

40 墓室埋土 ネコ 大腿骨 R (p)(d)

40 墓室埋土 ネコ 脛骨 不明

40 墓室埋土 ネコ 第3中足骨 完存

40 墓室埋土 ネコ 踵骨 L 完存

40 墓室埋土 ネコ 腰椎 椎体前半欠損 椎体後関節面未癒合脱落

40 墓室埋土 ネズミ科 大腿骨 L p~s

56 墓室奥壁周辺床面直上 39 ブタ 橈骨 R 〔p〕 近位端未癒合

56 墓室奥壁周辺床面直上 31 ブタ 尺骨 L

56 墓室奥壁周辺床面直上 38 ブタ 尺骨 R 滑車切痕 イノシシ/ブタ?

56 墓室奥壁周辺床面直上 16 ブタ 尺骨 不明

56 墓室奥壁周辺床面直上 42 ブタ 中手/中足骨 不明 〔d〕 遠位端未癒合、切断

56 墓室奥壁周辺床面直上 17 ブタ 基節骨 不明 (p)~d

56 墓室奥壁周辺床面直上 43 ブタ 基節骨 不明 完存

56 墓室内一括 ブタ 中節骨 不明 完存

56 墓室内一括 ブタ 中節骨 不明 (p)~d

56 墓室内一括 ヤギ M(上顎) 不明 破片

56 墓室内一括 ヤギ I(下顎) L ほぼ完存

56 墓室奥壁周辺床面直上 46 ヤギ 頸椎 おおむね残存 椎体後関節面未癒合

56 墓室床面直上 3 ヤギ 下顎骨 L [m₁m₂m₃]

56 墓室内一括 75 ヤギ 肩甲骨 L くびれ部~肩甲棘基部~外側縁 CM多数、くびれ部で切断

56 墓室内一括 71 ヤギ 上腕骨 L

第 32-1 表 西前田原 B 丘陵出土の脊椎動物遺体一覧

p:近位端 ps:近位側骨幹 s:骨幹 sd:遠位側骨幹 d:遠位端 ( ):端部未癒合脱落 < >:端部未癒合残存 〔 〕:未癒合で脱落した端部 [歯種記号]:下線部→残存歯、記号のみ→脱落歯、×→歯槽閉鎖 遺構

地点

取上

分類群 部位 左右 残存状態 所見

56 墓室内一括 ヤギ 上腕骨 L

56 墓室内一括 ヤギ 橈骨 L

56 墓室内一括 ヤギ 尺骨 L (肘頭)~s

56 墓室奥壁周辺床面直上 14 ヤギ 寛骨 R 寛骨臼~坐骨+腸骨の一部

56 墓室奥壁周辺床面直上 3 ヤギ 大腿骨 L (p) 下記の56号墓墓室一括の資料と関節

56 墓室奥壁周辺床面直上 20 ヤギ 大腿骨 L (p) 下記の56号墓墓室一括の資料と関節

56 墓室内一括 ヤギ 大腿骨 L 〔p〕 56号墓取上№20と関節

56 墓室内一括 ヤギ 大腿骨 L 〔p〕 56号墓取上№3と関節

56 墓室奥壁周辺床面直上 34 ヤギ 大腿骨 R s~<d> 遠位端癒合中

56 墓室奥壁周辺床面直上 2 哺乳類 胸椎 おおむね残存 椎体関節面未癒合

56 墓室奥壁周辺床面直上 44 哺乳類 胸椎 おおむね残存 椎体前後関節面未癒合脱落

56 墓室内一括 哺乳類 椎骨 椎体 未癒合で脱落した椎体関節面

56 墓室内一括 哺乳類 椎骨 椎体 未癒合で脱落した椎体関節面

56 墓室奥壁周辺床面直上 5 哺乳類 椎骨 椎体 椎体前後関節面未癒合脱落

56 墓室奥壁周辺床面直上 5 哺乳類 椎骨 椎体 椎体前後関節面未癒合脱落

56 墓室奥壁周辺床面直上 5 哺乳類 椎骨 椎体 未癒合で脱落した関節面

56 墓室奥壁周辺床面直上 6 哺乳類 椎骨 破片 集計対象外

56 墓室奥壁周辺床面直上 11 哺乳類 椎骨 椎体 椎体前後関節面未癒合脱落

56 墓室奥壁周辺床面直上 12 哺乳類 椎骨 突起 頸椎?

56 墓室奥壁周辺床面直上 13 哺乳類 椎骨 突起 破片

56 墓室奥壁周辺床面直上 15 哺乳類 椎骨 突起 破片

56 墓室奥壁周辺床面直上 28 哺乳類 椎骨 突起 破片

56 墓室奥壁周辺床面直上 29 哺乳類 椎骨 棘突起

56 墓室奥壁周辺床面直上 35 哺乳類 椎骨 椎体 未癒合で脱落した椎体関節面

56 墓室奥壁周辺床面直上 36 哺乳類 椎骨 椎体 未癒合で脱落した椎体関節面

56 墓室奥壁周辺床面直上 37 哺乳類 椎骨 椎体 未癒合で脱落した椎体関節面

56 墓室奥壁周辺床面直上 26 哺乳類 上腕骨 不明 〔p〕 未癒合で脱落した近位端

56 墓室内一括 哺乳類 上腕骨 L (d)破片 遠位端未癒合脱落

56 墓室奥壁周辺床面直上 24 哺乳類 腸骨 L 耳状面周辺 CMおよび切断

56 墓室奥壁周辺床面直上 25 哺乳類 腸骨 R 耳状面周辺 CM

56 墓室奥壁周辺床面直上 30 哺乳類 大腿骨 L 〔d〕 未癒合で脱落した遠位端、切断

56 墓室奥壁周辺床面直上 7 哺乳類 四肢骨 不明 破片

56 墓室奥壁周辺床面直上 22 哺乳類 中節骨 不明 〔p〕 未癒合で脱落した近位端

56 墓室奥壁周辺床面直上 7 哺乳類 手根/足根骨 不明 半存

56 墓室奥壁周辺床面直上 9 哺乳類 手根/足根骨 不明 おおむね残存 56 墓室奥壁周辺床面直上 28 哺乳類 手根/足根骨 不明 完存 56 墓室奥壁周辺床面直上 28 哺乳類 手根/足根骨 不明 完存 56 墓室奥壁周辺床面直上 33 哺乳類 手根/足根骨 不明 完存 56 墓室奥壁周辺床面直上 33 哺乳類 手根/足根骨 不明 完存 56 墓室奥壁周辺床面直上 33 哺乳類 手根/足根骨 不明 完存

56 墓室奥壁周辺床面直上 1 哺乳類 不明 不明 おおむね残存 膝蓋骨?

56 墓室奥壁周辺床面直上 4 哺乳類 不明 不明 破片 切断

56 墓室奥壁周辺床面直上 8 哺乳類 不明 不明 破片 微細破片

56 墓室奥壁周辺床面直上 10 哺乳類 不明 不明 破片

56 墓室奥壁周辺床面直上 18 哺乳類 不明 不明 破片 CM

56 墓室奥壁周辺床面直上 19 哺乳類 不明 不明 破片

56 墓室奥壁周辺床面直上 21 哺乳類 不明 不明 破片 指骨?、切断

56 墓室奥壁周辺床面直上 27 哺乳類 不明 不明 破片

56 墓室奥壁周辺床面直上 32 哺乳類 不明 不明 破片

56 墓室奥壁周辺床面直上 40 哺乳類 不明 不明 破片 微細破片

56 墓室奥壁周辺床面直上 41 哺乳類 不明 不明 破片

56 墓室奥壁周辺床面直上 45 哺乳類 不明 不明 破片

56 墓室内一括 哺乳類 肋骨 不明

56 墓室奥壁周辺床面直上 23 哺乳類 肋骨 不明 破片

56 墓室内一括 6 同定不可 不明 不明 破片

56 墓室内一括 14 同定不可 不明 不明 破片

第 32-2 表 西前田原 B 丘陵出土の脊椎動物遺体一覧

ドキュメント内 浦添市文化財調査報告書 | 浦添市 (ページ 122-127)

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